阪本社長のご経歴を教えてください。
大学を出てからフランスの方に留学に行きまして、そのままフランスで音楽の仕事をしていました。
なので、前職はというと、実はミュージシャンなんですよ。
30歳になるまでは完全にフリーランスで音楽を仕事にしていまして、ヒップホップからバッハまで、何から何までトランペットで演奏するという。
そうだったんですか!それはすごいですね! 30歳を過ぎてから、今の家業を引き継がれたんですか?
そうですね。
皆さん勘違いされているんですけど、音楽の仕事って、雇い主からまず楽譜というかたちで設計図を渡されるんですよ。
あれは完全に施工図面で、それを見てクライアントとか上司の望むものを、トランペットという出力装置で楽譜を出力するということをやって、良ければ契約が続いたり、悪かったらクビみたいなね、そういう職人のようなお仕事なんです。
自分自身のやりたいことを作るとなるとアーティストなんですけど、ぼくみたいな雇われ型のミュージシャンは、今お話ししたような職人タイプですね。

30歳になったときに、家業を継ぐか音楽を続けるか決めるという話になっていて、音楽の仕事も良いときは一晩で20~30万ほどもらえるんですけど、悪いときは月収3000円とかもあるんですよね。
だったら家業を継いで、チューチュー甘い蜜を吸いながら…。
言い方ですよ、言い方!(笑)
いやでも本当に、そういう甘い考えで家業を継ぐことに決めました(笑)
大学では、経営学などを学ばれていたんですか?
いやもう全然。
アルバイトはしていましたけど、経営の勉強も仏壇店の勉強も全くしていない状態でしたね。
タイムカード等もない、業界としては全く異なる音楽の世界からこちらに移ってきたという感じです。
そうなると、30歳で家業を継がれてからしばらくは、かなり大変だったのではないですか?
かなり大変でしたね。
割となめているところもあって、何の根拠も無いんですけど、俺やったら出来るやろう、みたいなね(笑)
正直どの従業員さんよりも能力が低いわけですから、結構打ちひしがれるというか、今までの経歴が全く役に立たなくて、最初の1~2年は苦しい時期が続きましたね。
経営の勉強は、独学で学ばれたんですか?

完全に独学ですね。
和歌山県がやっている起業の研修イベントとかに、家業に入っているということを隠して参加したり(笑)
経営に関しては本当に完全な素人だったので、色んな手段を使って学んでいましたね。
割と昔からオタク気質で、カタログを眺めては数字を見て、こっちの方が上やとか、こっちの方がすごいみたいなことを考えるのは好きだったので、仏壇仏具に関しては知識の吸収は早かったです。
仏壇仏具の難しいところって、お客様が基本的に60歳以上で、たかだか30歳くらいの若造よりも、倍以上生きてらしゃるわけなんですよね。
なので、専門知識も皆さんの方がよっぽど高くて、とにかくそこに追いつき、追い抜かなければという気持ちで必死でしたね。
また、経営者になって改めて思いましたが、経営者って会社員とかアルバイトのレベルを上げた後に転職できるものではないんですよね。
ドラゴンクエストとかであるじゃないですか、レベルを上げて上級職に転職するみたいな。
もちろんそういうタイプの経営者さんもいらっしゃると思うんですけど、ぼくは経営者になるっていうのは、起業も関係していると思うんですけど、レベルを上げたから起業ではなくて、サラリーマンとしてまともにやっていけない人間だから起業しているって結構あると思うんですよ。
ぼくなんか割とそうで、社会人としてまともにやっていけるスキルがないので(笑)
何か飛びぬけたスキルがあるとか、人に雇われているとしんどいなって思う人は、起業とか社長になるという選択肢は有りやなと思います。
ぼくの周りの経営者さんたちを見ていても、決してすべての能力が高いから起業されているわけではなくて、自分のやりやすいやり方でやるために起業されている方が多いですね。
なので、結果的にぼくは家業を継いで良かったなと思います。
ありがとうございます。 サラリーマン・アルバイトの延長に起業があるわけではないというのは、すごく勉強になりますね。 ちなみに、今御社は従業員さんは何名くらいいらっしゃるんですか?
家族経営が中心なので、今は全部で5名ですね。
従業員の方たちに快適に働いてもらうために、阪本社長が心がけていることは何かありますか?
とにかく従業員さんのスキルが何よりの宝だなと思っていて、例えば休日を取りたいとなったときに、かなり融通は聞かせて好きなタイミングで取っていただいてますね。
従業員さんで、とあるアイドルグループ推しの方がいらっしゃるんですけど、すでにシフトが出ていたとしても、アイドルグループのコンサートが決まろうもんなら可能な限りシフト変更してお休みをあげたりしてますよ(笑)
会社よりそっちの方が大事やから行っておいで!と。
それは働きやすそうで、働く側からすると嬉しい限りですね!
以前統計を取ったことがあるんですけど、人生の中で、仕事をしている時間って、たかだか20%もないんですよ。
例えば1歳から20歳までは学校に行って、65歳くらいからは仕事をしていないと考えて、さらに睡眠時間や家の時間等も除外すると、仕事の割合は本当17%とかになって。
とはいえ、この貴重な時間を従業員さんは会社に預けてくださっているわけですよ。
それに対して我々ができることは少ないんですけど、貴重な時間を労働に割いてくださっている以上、やっぱり気持ちよく働いていただきたいし、好きなタイミングで休んでいただきたいなと思いますね。
あと、これは記事にしなくても良いんですけど、この会社もいつ潰れるかわからないから、積立NISAとかやった方が良いよという話もしたりしてます(笑)
やり方の説明とかもしてあげて、万が一のときのために積立は続けるんやで、と(笑)
面白いので、そこは記事にさせていただきます(笑)
言ってしまえば、そこまで手の内を明かしているんですよね。
うちは今年創業112年になりますけど、それって本当にお客様だったり従業員さんに支えていただいた結果、めちゃめちゃ運よく続いているという話なだけですから。
それを今後も続けていくとなると、やっぱりお客様や従業員さんの支えがないと無理なんですよね。
いつ何が起きるかわからないですから、そういったところまで従業員さんにはお話しています。
結論、積立NISAはやったほうが良いよという話です(笑)
ありがとうございます(笑) そこまで阪本社長が腹を割って話せる環境があるということが、御社の大きな魅力でもありますよね。
ぼくもこの会社を継いだ当時は、社長の息子だということで、誰よりも成果を出してやろうとか、誰よりも仕事ができるところを見せつけようと思ってめちゃくちゃ頑張ったんですけど、やっぱりそれがまたしんどかったんですよね。
実際のところ、自分には能力がなかったので。
バリバリ引っ張っていくタイプの経営者さんもいらっしゃると思うんですけど、ぼくはどちらかというと、従業員さんたちが頑張ってくれて成立しているタイプなんです。

だからこそ、働きやすいように何かしてあげることが、ぼくの一番の仕事なのかなと思います。
それは、経営者にしかできないことですからね。
ありがとうございます。 では次に、阪本社長がずっと大切にされている言葉や尊敬されている方はいらっしゃいますか?
ぼく自身、経営者になるまでビジネス本も読んだことがなく、ミュージシャンの本ばかり読んでいたんですけど、ひとつは、デューク・エリントンというミュージシャンが言っている言葉で、「音楽にジャンルはない。あるのは良い音楽と悪い音楽だけだ。」というものがあって、世の中の物事すべて、良いか悪いかで考えるようにしています。
似たような話ですけど、マイルス・デイヴィスというぼくの大好きなジャズのトランぺッターがいて、昔は黒人のミュージシャンは黒人しか雇わず、白人のミュージシャンは白人としか一緒に演奏しないというのが普通だったんですけど、彼は、「肌の色がどれだけ違っても、良い音楽を演奏するなら俺は一緒にやる。」と言って、黒人と白人が一緒に演奏するきっかけをつくったミュージシャンなんです。
マイルス・デイヴィスがそうであったように、ぼくもスキルがあれば学歴とか年齢とか性別とかで判断しないようにしています。
まだまだ学歴社会が色濃い中、阪本社長のようなお考えの方もいらっしゃることで、救われる人も多いと思います。
ぼく自身も音楽の学校出身で偏差値が低いんで、そういう価値観にしておいた方が、ぼく自身も有利になりますから(笑)
またそうやって謙遜する(笑)
実際、今会社で右腕として働いてくれている方も高卒ですけど、めちゃくちゃ仕事も出来ますから、やっぱり学歴とかは関係ないんだな、と。
よほどの大企業はわかりませんけど、中小企業であれば本当にそのあたりは気にしなくて良いと思いますね。
ありがとうございます。 では、阪本社長が家業を継がれてから、一番困難だったこと、辛かったことは何でしょうか?
家族以外で従業員さんを3人雇っている時期があったんですけど、従業員同士社内で喧嘩があって、そのうちの2人が突然辞めたということがありまして。
社員同士の喧嘩でしたが、当時はぼくもどちらの間にも入らなかったんですよ。
結果、2人辞めることになったので、もっと引き留めた方がよかったかなとか、もっと上手い立ち回りができたんじゃないかなとか、後悔して色々考えましたね。
人数こそ少ないかもしれませんが、当時は社員の半数以上が辞めるという危機的状況だったので、それは辛かったですね。
喧嘩の原因は、仕事に対する価値観の違いのようなものですか?
そうですね。
辞めた2人は、すごくシビアにきっちりやりたいという意識の人たちで、真面目にコツコツ取り組むタイプだったんですよ。
残った1人は、細かいことは良いから楽しく売り上げを上げていきたいというタイプの人で、正直成果を挙げていたのは、実は残った1人だったんですよね。
それに対しては、ぼくもどっちが正しかったとかはなくて、去る者追わずという状況でしたね。
今となっては、その後会社の雰囲気も良く、働きやすくなったのも事実ですので、これで良かったのかな、とも思います。
ただ、その当時は本当に辛かったです。
実際、退職していく人の理由のほとんどとして、やっぱり人間関係が多いみたいですね。
ありがとうございます。 では次が最後のご質問となり、テイストががらっと変わるんですけど、阪本社長が最近購入されたものの中で、一番高価なものは何ですか?
ここ半年、1年でいえば、トランペットですかね。
年始にアウトレットでポケットトランペットを買いまして、定価50,000円くらいのものが29,800円にまで下がっていたので、ついつい。
実はぼく、お休みの日に希望する方に対してトランペットのレッスンもしていまして。
自分用に買ったんですけど、受講生の小学3年生の男の子に、現在貸し出し中です(笑)
あとは、香水ですね。
今度新規事業でお香を作ろうとしていて、お香の勉強って、そもそも情報がなかなか世の中に出回ってないので難しいんですよね。
でも香水であれば、実は専門学校や大学があったりするので、知識を得るために膨大な資料があるんですよね。
だからお香の勉強の一環として、結構買ったりしています。
香りって、人間の五感の中で、一番解明されていないんですよ。
例えば触覚とか視覚とかって、すごく情報量が多いからわかりやすいんですけど、嗅覚って本当に難しくて、表現しづらいというか。
脳にどういう影響があるかとかも、まさに今発展途上で。
そういう部分も含めて、香りに対してすごく心惹かれるところはありますね。
そうなんですね。 それは本当に興味深い! お香の完成も、楽しみですね!
ありがとうございます。
ではご質問項目は以上になります。 阪本社長、本日はお忙しい中、ありがとうございました! 引き続き、Xでもよろしくお願い致します。
ホンマにこんな内容で大丈夫かな…(笑)
まだまだ立派な社長さんがたくさんいらっしゃるのに、ぼくなんかが掲載されて。
まあ、焼き肉のキムチを食べる感覚で、ついでに読んでいただけたら十分です(笑)
こんな人でも、社長になれるんや、みたいな(笑)
最後まで笑わせてくれますね!(笑) きっと起業志望の若者たちが、阪本社長から元気をもらっていると思います!
だと良いんですが(笑)
こちらこそ、本日はありがとうございました!