隅田社長のご経歴を教えてください。
桃山学院大学を卒業しまして、3年間好きなことをさせてもらえる時間をいただいたので、一般的な就職活動をして、営業職をしていれば何とかなるかなという安易な考えで、大手飲料メーカーに就職させていただきました。
そこで3年働かせていただいたあと退職して、家業に戻ってきました。
これが2008年4月ですね。
なので家業を継ぐまでは一社しか経験していないんです。
その飲料メーカーでは、ずっと営業職をされていたんですか?
ずっと営業ですね。
とにかく営業をしたかったというのもあって。
当時は好きにできる時間が3年しかないということで、がむしゃらでした。
何か爪痕を残さないとと思って。
1年目は研修でしたけど、2年目3年目はそれなりに成果も残せて、2年目が近畿で1位になれて、3年目は2位になれたんですよ。
2年連続で海外旅行のご褒美も頂いて、めちゃくちゃ面白いなと思って。
翌年には最年少で主任やなー!と当時の上司に言われながら退職したので、辛いところはありましたけどね。
考え直してくれと、強く引き留められたのでは?
そうですね、結構引き留められました(笑)
仲の良い方には家業を継ぐと本当のことを言って辞めましたが、父親が病気で危ないんですと嘘も交えつつ(笑)、何とかご理解いただいて。
そんなトップセールスの方が抜けるのは、相当痛手ですもんね…。
今となっては、3年という期限があったからこそできたことじゃないかとも思います。
まあでも、あの時頑張ったから、今の自分があるのかな。
飛び込み営業や法人営業が大半だったんですか?
そうですね。
わたしが担当していたのが大阪の本町あたりだったんですが、自動販売機設置の営業であったりとか、アパレル関係の会社から、衣類とか生地とか、そういった関係の展示会のドリンクサービスを提案して欲しいという営業も多かったですね。
担当させて頂いたエリアも花形というか、たまたま大阪の中央区で、激戦区で競合ひしめく中ではありましたが、運よく好成績を残すことが出来ました。
営業で契約を取る秘訣みたいなものはありますか?
あんまり飛び込み営業は得意ではなかったんですよね。
自分が得意だったのは、深堀りで。
割と初対面の人でも仲良くなれるなと思っていたので、仲良くなった人をどんどん深堀して、系列会社をご紹介して頂くといったようなことをやっていましたね。
仲が良ければ色んな提案も聞いてもらいやすいので、あまり精神的な負荷もなくやれていましたね。

非常に勉強になります。やはり紹介の力は大きいですよね。出来る営業マンは、皆さんこの紹介を通じて成果を挙げられている印象です。
今の話もかなり昔のことにはなりますが、それが自分の得意なやり方を見つけるきっかけにはなりましたね。
ありがとうございます。では、家業を引き継がれて社長になられてから、社員さんたちに快適に働いていただくために、隅田社長が心がけていらっしゃることは何かありますか?
入社当時はそこまで考える余裕はなかったですね。
やはり数字をつくってなんぼとか、親父を超えないとアカンとか、とにかく親父と同じやり方で超えなければと思っていたんですよね。
でも、ある時から、同じやり方で超える必要はないんやなと考えるようになって。
2017年頃、ちょうどわたしが専務になったくらいの話ですが、そもそも当時は理念というものも存在していない会社だったので、理念作りに目を向け始めたんです。
前職でも感じていましたが、数字だけにとらわれる虚しさってあるじゃないですか。
当時は成績が良かったので、結構歩合の比率も高くてお給料も良かったですが、その反面、成績が悪くて腐っている人たちが多くいたのも事実で。
俺らが担当してるエリアは、いくらやっても伸びないから一緒や、みたいな。
それがうちの会社でもあったので、何とかできないかなと思っていました。
当時はうちの会社も数字がすべて、売り上げがすべてだったんですけど、何とか数字以外のやりがいを見つけて欲しいなという想いから、理念を作って、中期経営計画というのを始めました。
この中期経営計画って何かというと、上から数字を与えるんじゃなくて、皆に考えて数字を出してもらう仕組みなんです。
営業所長たちだけでなく、社員のみんなが自発的に考えてくれた数字なので、多くの人が数字に対してこだわりを持ってくれるようになったんですよ。
これをやり始めてから、かなり変化が出てきたなというのは実感としてありますね。
1期目はまだ半信半疑でしたが、2期目になって、言ったことが本当に出来るんだという裁量に気づいてもらえたというか。
会社の数字というのは、ほとんどが上からのトップダウンですもんね。

拠点長には、各拠点にかかっている経費を開示して、損益分岐点はもちろん伝えてはいます。
自発的に低い目標を設定して、結果赤字だと何をやっているかわからないので。
人員の採用に関しても任せているので、うちは基本的に中途採用でしか採用していないんですけど、そのタイミングも各拠点に任せています。
それに合わせて、総務経理課が動くという。
インスタのおかげで募集も来やすくなって、今のところは採用に関しても困ることはないですね。
この理念づくりと中期経営計画のおかげで、働きやすくというか、やりがいを持って働いていただけるようにはなったかなと思います。
御社は本当に社員さんが活気づいているというか、いつお伺いさせていただいても、皆笑顔でキラキラしていますよね。それがとても印象的です。
そう言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます。
今のお話と内容が少し重なるかもしれませんが、御社の一番の魅力は何ですか?
お客様にアピールするような魅力であれば、ねじ屋という強みで、どんな業種にも取引先がいるんですよね。
半導体制動装置とか、自動車、医療、建築土木、スマホや眼鏡といったように、ほとんど刺さっていない工業がなくて。
業種に応じた、コストレベルに応じたノウハウで提案ができるというのがうちの強みかなと思いますね。
おっしゃられるように、ねじの無い生活が考えられないですね。
なかなかクローズアップはされないですけどね(笑)
気づけばどこにでもあるんです。
それを活かした営業活動が最大の強みですかね。
競合他社さんはいらっしゃらないんですか?
競合他社はわからないですね。
お客様ごとに分析をしているので、決まった競合他社はいないというか。
どちらかというと、同じ業界で競合他社として認定され、今や追われる立場では?
どうでしょう?(笑)
規模的にはそんなに大きな規模ではないんですけどね。
でも最近インスタに関しては、各社様から、目標にしてますと嬉しいお言葉も頂くようになりました。
そうなんですね。確かにインスタに関しても、投稿頻度も高く、すごく力を入れられていますよね。
はい。みんな本当によく頑張ってくれています。
今お伺いさせていただいた内容の他に、何か御社の強みというものはありますか?
わたし個人として自信を持っているところは、人の対応力についてはどの拠点に行っても同じようなレベルの高い対応ができるというところですね。
年に1回実施しているお客様アンケートがあるんですが、これはそもそもうちの弱みを見つけるためのアンケートだったんです。
でもこれを逆にして、うちを好意にしてくださっているお客様に対して、なぜうちを選んでくれているんですか?というアンケートに変えたときに、8割9割のお客様が、対応力とか、何でも聞いてくれるとか、無理とか言わないとか、各拠点でそういう回答をいただいて。
40~50社にアンケートを実施した結果がそれだったので、改めて自分たちの強みに気づけましたね。
拠点ごとにばらつきがないというのも、すごい話ですね。それは例えば、各拠点長の方を対象に、隅田社長が定期的に研修をされているんですか?
それは拠点長だけでなく、全社員を対象に年に2回1on1を実施しています。
全社員さんを対象に年2回!? すごいですね!!
その中でもちろん評価も一部するんですけど、各々目指す目標であったり、道を逸れそうなメンバーがいればちゃんと正してあげたりとか。
ひとり1時間か2時間はかかりますけどね。
やっぱり理念を掲げている以上、ひとりでも逸れていたら、輪が乱れてしまうので、それを正してあげれたらというのがわたしの想いです。

社員さんは今全部で70名ほどいらっしゃるんですよね?なかなかできることじゃないと思います…!本当にすごい!
100人まではできるかなと思います(笑)
いずれにしても、この面談のおかげで、離職率は大幅に減ったので良かったです。
ありがとうございます。では次に、隅田社長が尊敬されている方や、信念として常に抱いている言葉などはありますか?
割と流動的に尊敬している人はいるんですが、常にその人のことを思っているとかではなくて。
自分のステージが少しずつ上がるにつれて、尊敬する人も変わってくるというか。
なので、そこは明確にお答えできないんですけれども、座右の銘くらいならお答えできます。
「感恩報謝」という言葉は、常に大事にしていますね。
どんな状況でも、すべての人に感謝を忘れないということ。
従業員に対しても、もちろんそうですしね。
常に感謝の気持ちを持っていれば、従業員に裏切られたとか、何か悪いことが起きた場合でも、それによって自分も成長できるという考えに繋がったりするんですよね。
とはいえ、もちろんイライラすることもあるんですけどね(笑)
そういう時こそ、この言葉を思い返すようにしていますね。
そういうマインドは、いつ頃からお持ちになられていたんですか?
いつからでしょうね、気づいたらそういう考えになっていたというか。
隅田社長のような立派な考え方を持つように、我が子も育てたくて(笑) どういう教育をすれば、そんな風に成長してくれるのかなと、個人的に(笑)
教えてもらったというよりかは、経験して、がむしゃらにやって、嫌なことに対して嫌がらずに向き合う。
大半の人が、失敗が怖くてやらないと思うんですけど、でもそれだと挑戦できなくて、失敗に対する対処もできないようになって、ただただ横ばいに人生を歩んでいくだけになってしまうと思うんですよね。
失敗を恐れずにチャレンジできる環境が、一番大事なんじゃないかと思います。
あとは、親がそれを歯がゆく思いながらも、見守ってあげられるような器量ですかね。
…ありがとうございます!勉強になります!!
いやいやいや(笑)
とんでもない!
そんなこと言いながら、ぼくもなんだかんだ怒鳴り散らすこともありますよ(笑)
あまりイメージが湧きませんが(笑) では、隅田社長がこの会社を引き継がれてから、一番困難だったことや辛かったことは何かありますか?
一番の苦労は、やっぱり理念の浸透ですかね。
当時はひとりでつくって、ひとりで広めようとしたんですよね。
そうなると当時は、こいつ何言い出してるんやという目で見られるんですよ。
その時が一番しんどかったですかね。
チームプレイのチの字も無かったような組織だったんで、自分の担当外のお客さんは、電話がかかってきてもそもそも取らないとか。
今の御社からは想像もつかないですね…。
そうなんです。
でも、当時のそういうメンバーに、この理念を説くわけですから、それによって当時の番頭レベルとか、ベテラン社員も何人か辞めましたしね。
当時はわたしも焦って強めに言ったところもあったので、そこは反省すべき点なんですが…。
社内にゴミが落ちていても誰も拾わなければ、挨拶もしてくれないし、本当に今とは真逆の会社でした。
そんな社風でしたから、当然利益も出るわけないですしね。
なので、実は当時から売り上げにはあまり悩んだことがないんです。
理念を浸透させるために動き回って一生懸命やっているうちに、気づけば利益もついてきたという感覚です。
それは理想的なかたちですね。
本当にそこはありがたくて。
みんなが向上心を持って、前向きにやってくれて、感謝の気持ちを忘れずにいてくれたから、気づいたら売り上げが残ったという感じです。
この一連のお話は、当インタビューサイトのコンセプトにベストマッチですね。これから起業される方々に、理念浸透の重要性が伝わると思います。
やっぱり理念というのは、会社の進むべき方向ですからね。
大切にしたいです。
そうですね、ありがとうございます。では最後に、隅田社長がここ最近でご購入された、一番高価なものは何か教えて頂けますか?
なんやろう…、あんまり物買わないんですよね…。
スーツも服も割とリーズナブルやし…、靴も磨いて長く履いてるしなぁ…。
強いて言えば、直近で行った家族旅行くらいかなぁ。
ちなみにそれは、どちらへ行かれたんですか?
先週、北海道まで行って来ました。
ずっと長く使える物を選んで買ってるので、物は最近は本当に買ってないですね。
革製品を磨いたりするのが好きなんですよね(笑)
でも、社員さんを大事にされる社長さんって、物も同じように長く大切に使われている印象ですね。
そうですね、全然おもろい回答じゃなくてすみません(笑)
とんでもない(笑) 家族想いの素敵な社長さんということを改めて感じました。ありがとうございます。
結局は家族が一番ですからね。
それがないと、やっぱり仕事もここまで頑張れていないですし。
子どもがいるから未来が見れるというかね。
ほんと、どんどん名言が飛び出しますね!
そうですか!?そんなことないですよ!(笑)
今日も本当にたくさん学ばせていただきました。隅田社長、今日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。